車椅子で園芸を始めたいと思ったとき、多くの人が最初に探すのは「できる方法」や「正しいやり方」ではないでしょうか。
けれど、実際に続くかどうかを分けるのは、方法よりも、最初にどんな前提で始めるかでした。
無理なく続けられる負荷に調整すること。場合によっては、枯らしてしまう前提で設計すること。そうした考え方の
ほうが、結果的に長く続きます。
この記事では、正しい園芸のテクニックを伝えるのではなく、始める前に一度立ち止まって考えてほしい3つの視点を整理します。
「何をやるか」より先に、「何をやらないか」を決める
結論から言うと、車椅子での園芸は、すべてを当たり前にやろうとすると必ず破綻します。
なぜなら、一般に使われている園芸情報は、健常者目線で考えられているものがほとんどだからです。それをそのまま実行しようとすると、体力、姿勢、作業動線など、さまざまな面で無理が出てきます。
園芸では、力仕事が必要になる場面もありますし、低い位置や高い位置での無理な姿勢での作業は、腰や背中に大きな負担がかかります。
また、植物を置くスペースについても、車椅子が旋回できる範囲を考えなければ、鉢を倒したり、場合によっては
自分が怪我をするリスクもあります。
僕自身、最初は情報を鵜呑みにして始めました。けれど実際にやってみると、「これはうまくいかないな」
「これは正直、危ないな」と感じる場面が何度もありました。
水やり、植え替え、鉢の移動。どれをとっても、一般の方と比べて、2倍、3倍の時間や体力が僕の場合は必要になる
ことに気づきます。
では、どうするか。
全部を完璧にやろうとしないこと。これが一番大切でした。
体調がよくない日でも世話ができる場所で育てる。水やりの負担を考えて、鉢数は「嫌にならない範囲」に抑える。
夏は早めに遮光をし、冬は成長を求めず、ダメージを与えないことだけを優先して室内に取り込む。
僕は冬の間のみ、耐寒性のないものを室内でLED管理しています。照射距離を近くするなどして徒長を抑える工夫は
していますが、「きれいに育てる」よりも、「枯らさない」ことを優先しています。
こうして、減らすこと、諦めることを先に決めるという考え方に変えていきました。
もちろん、このやり方は「邪道だ」と言われるかもしれません。でも、邪道でも構いません。僕にとって大切なのは、正しさではなく、長く続けられることだからです。誰もが広い庭や理想的な環境を持てるわけではないのと同じように、自分に合ったやり方を選べばいいと考えています。
僕は僕なりに、長く続けられるやり方を最優先に考えています。長く続けられるからこそ、結果として、楽しめる趣味にもなっていく。そう考えています。
限られた環境、思い通りに動かない体。それを抱えたまま、無理に変えようとせず、自分に合うやり方を探っていく。今のところ、それくらいの距離感がちょうどいいと感じています。
続けられるかどうかは、植物より「環境」で決まる
園芸が続かなくなると、つい「植物が合わなかった」と考えがちですが、実際は環境がうまく合っていないケースが
ほとんどです。
車椅子での園芸では、特に次の3点が続くかどうかを左右します。
まず高さ。目安ですが下からおおよそ40〜110cmの範囲を外れると、世話のたびに体への負担が積み上がります。
かがむ姿勢や、のけぞるような作業は疲労だけでなく事故のリスクも高まります。
次に距離。生活空間から植物までの距離が遠いほど、「今日はやめておこう」が積み重なりやすくなります。
外への移動に段差や乗り換えがある場合、この傾向はさらに強くなります。
そして動作。鉢の移動や水やりは、その量が増えてくると健常者でも大変な作業になります。車椅子では加えて準備と工夫が必要な重労働になります。
だからこそ、植物を迎える前に、どこで・どの姿勢で・どの程度なら無理なく世話できるかを先に考える必要が
あります。植物選びは、その環境に合うものを後から決めれば十分です。
「頑張ればできる」は、長く続ける人の考えではない
車椅子での生活では、体調や生活リズムが安定しない日があることを前提にする必要があります。「今日は無理だな」という日がある想定が抜けた組み立てでは、遅かれ早かれ破綻します。
長く続いている人は、意志が強いわけでも、頑張っているわけでもありません。多少世話ができない日があっても、
失敗しても、「またやり直せばいい」と受け止められる余地を持って向き合っています。
園芸では、枯らすことそのものよりも、植物との接点が完全に切れてしまうことのほうが問題です。
ここで言う接点とは、水やりをする、葉を見る、触る、状態を確認するといった、植物を気にかける行為そのものを
指しています。
完璧な世話や美しく育てることを最優先にすると、一度ルーティンが崩れただけで気持ちが離れやすくなります。
だから、1分だけ見る、葉に触る、霧吹きをする。それだけでも十分です。接点さえ切れなければ、園芸はまた続けていけます。
まとめ
車椅子で園芸を始めるうえで、大切なのは「正しくやること」ではありません。
無理をしない前提を置き、環境を先に整え、できない日があることを含めて設計すること。
そうして、植物との関わりが完全に途切れない状態を保つことが、結果的に一番長く続きます。
このサイトでは、実際に僕がどんな環境を整え、どこを削り、どこを残してきたかを、具体的な経験とともに書いて
いきます。
最初にどう向き合うかで、その後の続けやすさは案外変わってくるものだと感じています。
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